戻ってきたと思ったらPC絶不調で回線繋がらなくて散々なほろです。
ようやっとぎりぎりPCに小宇宙燃やしてもらってブログ更新ですすみません。
老師お誕生日おめでとうございます! でも小話はシベリア師弟なんです老師は後ほど。名前変換ないけど最後にちょっとだけ主人公出ます。
シベリアの二人は主人公に大変好印象を持っているので、割とすぐにべた褒めしますよ、というはお話。
お返事はのちほど直接お伺いしたり改めてこちらでさせていただきます!
春爛漫、十二宮紀行裏話 (カミュと氷河とアイザック in東シベリア)
花の香りに満ちた春のギリシャを離れ、未だ冬の眠りの最中にある東シベリアへ。
陽の落ちた暗闇に舞い落ちる雪と暖炉で赤々と躍る炎の傍らで、カミュは弟子たちと温かな食卓を囲んでいた。
一度は離別し、あるいは拳を交えた氷河やアイザックとこうしてまた穏やかに食事ができる幸福を、カミュは言うまでもなく女神に感謝していた。
しかし同時に、この時間が穏やか過ぎて未だに現実味がないかのように胸の内に靄を作ることがある。まるでこれは死の眠りが見せる夢なのではないか、と。
それを誰かに打ち明けたことはない。打ち明けるつもりもない。けれど、もしもそんな話をするのなら。
―― いつでもお待ちしております、カミュ様!
カミュは今日、昼間に言葉を交わした書庫番を思い浮かべた。
たとえば彼女なら、あの春の日差しのような笑顔でそんなことは杞憂なのだと笑ってくれるのではないだろうか。カミュにとって、彼女はそんな期待を抱かせる不思議な存在だった。
「カミュ」
「……ああ、どうした?」
「どうしたのか、はこちらの台詞です」
「聖域はどうですか、と聞いたのに」
気が付けば随分物思いに耽っていたらしかった。二人の弟子はそれぞれの隻眼で訝しげにカミュの様子を窺っている。
顔の造作は大人に近づいても、時折見せる表情は昔と余り変わらない。カミュは小さく息をついて薄く微笑んだ。
「すまない、少し考えごとをしていた。聖域は……そうだな、随分賑やかになったように思う。書庫番が駆け回っているせいかもしれない」
「相変わらずですね、彼女は」
「氷河は彼女と知己だったか」
「はい。今でも時々勉強を見てもらったり、本を貸してもらったりしてます」
「ほう」
初耳だ。弟子が世話になっていたとは知らなかった。礼代わりに、今度手土産を持っていくとしようか。
彼女が喜びそうなものを頭の中でいくつか挙げた時、それまで黙って二人のやりとりを聞いていたアイザックが探るように口を開く。
「その、書庫番とやらはどんな人物なんだ? 女、なんですか?」
「教皇宮の書庫を預かっている女性なんだ。頭が良くて、気さくで、マーマとはタイプが少し違うが、とても優しいひとだぜ」
「そうだな。理知的な面と活発な面を併せ持っている。考え方が柔軟で、目の離せない女性でもあるな」
聖闘士二人は、口の端に笑みすら乗せてどこか自慢げに書庫番の人物像を語る。
聖域にいる他の面々が聞いたら「誰だそれは」と突っ込まずにはいられないに違いないが、生憎と「些かお気楽がすぎる」やら「慎みにかける」といった指摘を入れてくれる者はこの場にはいないのである。
そのおかげで。
アイザックは想像してみる。
優しく気さくで、理知的な女性。教皇宮の書庫ともなれば、さぞ有能な人物に違いなかろう。ついでに女神の近くに仕えると言うなら見目も美しいのだろうという少年ゆえの妄想――もとい想像も加えられていく。
「さすがは聖域だ。知恵を司る女神アテナにふさわしい梟の如き女性がいるのか……」
海将軍アイザックはしばしの後、女神アテナの聖域、教皇宮の書庫番像を心の中に思い描き、感心したように頷いた。
少しばかりの誤解を生んだまま、東シベリアの夜は更けていく。
***
「ふへっくしょい!」
「なんだ、風邪か?」
「うーん、誰か私のこと噂してるんじゃないですか? 教皇宮の書庫番さんかわいいよね、とか」
「自分で言うか」
「いや、そう思ってた方がちょっと幸せになれるじゃないですか」
「まあ俺も俺はかっこいいと常に思っている」
「そうだな、わたしも自分の容姿については理解しているつもりだ」
「うん、キャンサー様とアフロディーテ様のそれはちょっと違うような気がします」
(終)
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