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あすて雑記

春爛漫、十二宮紀行裏話(獅子と双子)

彼女がミロに回収された後、双児宮の後片付けしている双子となぜかこのシリーズでは貧乏くじな役回りになりつつあるアイオリアです。
主人公は話題だけで出てきません。
一応ネタ帳にはアイオリアはかっこよくて面倒見の良い友人で本気になると凄い攻めるっていうメモ書きがあるんですけど、どっちも生かされてない感ある。
アイオリア好きです。

続きから小話です。


春爛漫、十二宮紀行裏話(アイオリアとサガとカノン)

 おい双子がまたケンカはじめたぞ。
 書庫番は任せた、といわんばかりに獅子宮を駆け抜けていったデスマスクを思い出すだけで、アイオリアの溜息は尽きない。
 カノンが本を満載した書庫番を背負って降りてから何時間も経っていないではないか。
ともかく、戦う力もない彼女があの壮絶な(そして大抵はくだらない理由の)兄弟喧嘩に巻き込まれて怪我でもしていないだろう――と、ここまで考えてアイオリアは多分、おそらく大丈夫だろうと考えを改めた。
 戦う力はないが、彼女はやたらめったら運が良い。ついでに図太い。この数年、友人としてたまに救い救われ、大体いつも振り回されまくっているアイオリアがいうのだ、間違いない。
もっとも、当の本人は冗談なのか本気なのか「繊細可憐」を自称して止まないが。

 そうはいっても放っておくわけにもいくまい。万が一のこともある。
気が乗らないながら、双児宮まで降りていけば案の定。

「貴様のせいでまた修繕費が嵩む。修繕のための必要書類も書かねばならん。仕事ばかりが増えて碌なことがない。やはりお前は悪の化身だったのだ。こんなことをしていては夜までに終わらんではないか……! ミロが来なければ彼女だってどうなっていたかわからんのだぞ!」 
「やかましい! なんでも俺のせいにばかりしおって、柱を倒した本数はお前の方が多いではないか。毎度の偽善者面は飽き飽きだ! さっさと片すぞ、あいつに本を傷つけたなどと喚かれてはたまらん」
 そこにはぎゃんぎゃんと飽きることなく罵りあう良い歳した双子の姿があった。
彼らときたら瓦礫を片付け、かつ職工たちに的確な指示を出しながら書庫番娘が(不本意にも)散らかしていった本を拾い上げているのだからその器用さには舌を巻く。

話題の書庫番娘もどうやら無事(?)避難できているようだし、無駄足だったなと踵を返した時だった。
(―― 兄さん?)
 小宇宙を介して兄からいくつかの伝言を受け取った。入って行けというのか、この渦中に。
面倒いや他でもない兄が、己に伝言を託したのだ、アイオリアがやらないで誰がやるというのか(ちなみにこの時アイオリアは直接サガとカノンに送れば良いのにという事実には気付かなかった)。
 アイオリアは兄に了解の意を返し、誰にともなく頷いて目の前で数十年の沈黙を埋めんばかりに罵りあう双子をに向き直った。そして。
「取り込み中すまないが」
 二人の間に割って入ろうと試みた。が。
「丁度いいところに来たなアイオリア! この愚兄に俺が書庫番を手伝ってやってたことを証言してくれ」
「いや、それよりにいさ――アイオロスから」
「アイオリア、なにも言わなくていい。彼女という大義名分をかざして怠けていたことなどお見通しなのだ。こんな愚弟の肩を持つことはない」
「伝言が」
「だから休憩していただけと言っているだろうが。俺はお前のように要領悪く根を詰めてなにもかも一度に肩を付けようなどというやり方はまっぴらご免だとも言っているはずだ」
「あるんだ、が」
「誰が要領悪いだ誰が根暗だ。お前こそ要領よくやっているつもりだろうがそのしわ寄せはすべて私に来るのがまだわからんのか」
「……」
 喧嘩に巻き込まれ口を挟む間も見出せず、アイオリアは身内に沸々と煮立っていくものを感じずにはいられない。
元来アイオリアは早々気の長い性質ではないのだ。若獅子は無意識にぐっと拳を握りしめた。
 まったく、こんな面倒事を引き起こしたのは誰なのか。喧嘩の仲裁を押し付けていったデスマスクか。仕事をさぼって獅子宮まで登ってきたカノンか。それとも本日十二宮を駆けずり回って本を回収している友人か。
(――ええい)
 考えるのも面倒だ。要は黙らせて話を聞かせれば良いのである。閃光の如き拳が双児宮で炸裂するまで、あと三秒。

(終)
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