ハッピーバレンタイン!
ぎりぎりでいつも生きていたいからブログですごく短いバレンタインのお話です。
アイオリア、デスマスクの順番で独立してるけど全部ぶっこみました。
心底どうでもいいですが、私は今年は何故かチーズおかきを頬張っています。
しょっぱくて美味しいですね。
それでは小話は続きからどうぞ!
ハッピーバレンタイン!(アイオリア)
はいどうぞ、と渡された菓子の包みを見、「なんだ余り物か?」。
アイオリアと彼女という、親しい友人同士であるがゆえの軽い冗談だ。きっと彼女はむくれてみせるか、「その通り!」とおどけるに違いないと踏んでいた。
ところがどうだろう。アイオリアの予想とは反対に、彼女は可憐な乙女の如く恥らいで頬を赤く染め、首をぶんぶんと横に振った。
いや、もともと年頃の娘である。そういう表情をしてもなんらおかしくないのだが、普段無縁に見えるだけに、アイオリアは戸惑った。
しかし今日の彼女は戯れでなくその表情のまま言う。
「逆だよアイオリア。余るほど作ってないし、むしろこれしか、ない、」
なんだかひどく気恥ずかしくなって、アイオリアの顔も次第に熱を帯びてきた。
だって、彼女とアイオリアは気のおけない友人同士だったはずだ。こんな甘酸っぱい空気とは無縁の、他愛もないことで笑ったり喧嘩をしたりするような。だというのに、そんな顔をされてしまっては、
「――そんな顔をして、俺じゃなかったら勘違いするぞ」
「アイオリアに勘違いして欲しい。っていうか、勘違いじゃない」
どうやら仲の良い異性の友人から、一歩先に進むことになりそうだ。
(終)
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ハッピーバレンタイン!(デスマスク)
真紅のバラといえば、この十二宮に置いては魚座の黄金聖闘士の持ちネタ(?)だが、今日その花を私に差し出してきたのは彼ではなく蟹座の黄金聖闘士のデスマスク様だった。
予想しなかった贈り物に、私はただただ呆けるばかりだ。
「これは一体」
「そういう日だからな、今日は」
「はあ」
いいから受け取れよ、と押し付けられた一輪のバラと一枚のメッセージカード。シンプルながらにセンスが良くて、それゆえにちょっと気障な感じがたまらなく彼らしくて胸がぎゅっとする。
デスマスク様に促されて、メッセージに目を通そうとした私はそこであら、と眉根を寄せた。この文面、イタリア語だ。
「デスマスク様、私イタリア語読めないです」
「辞書引け辞書」
「えー読んでくださいよ」
「自力で読め。得意だろ」
「まあ嫌いじゃないですけど」
「読んでのお楽しみってことだ」
彼はどことなく嬉しそうに笑い、そうかと思うとふと真面目な顔つきで私の手首を取った。
手のひらに唇を寄せながら、デスマスク様が「返事、待ってる」とくぐもった声で言うから、私は訳もわからずイタリア語の辞書はどの辺にあったっけ、なんて、どぎまぎする心を誤魔化すためにわざと意識を別の方向へと飛ばすのだった。
(終)
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