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あすて雑記

年の瀬(ムウ)

クリスマスという年間で一番のイベントに乗れなかった悔しさを胸にあっという間に年末です。
なんということでしょう。

ともかく、今年もお世話になりました。
いつもサイトに遊びに来てくださって、暖かいお言葉をかけてくださって、本当にありがとうございました。私もですね、その一言で今日を生き抜けます!
上手くいけば年内あと一回くらい更新したい。
予定は未定です。この言葉とはもう云十年仲良しです。
そんな私とasterismですが、また来年もどうぞよろしくお願いします。皆さま良いお年を!

続きは年の瀬ムウ様です。
未年なのでムウ様で始まりムウ様で終わります。

***

 年の瀬というのはいつの時代もどの場所もどことなく慌ただしい。
ムウが書類の締切をはじめとした野暮用を終えて白羊宮の階段を眼前にしたのは、既に月も高く昇りきり、星々がまたたく時間だった。にも関わらず、だ。
「あ、ムウ様こんばんわ」
 きざはしの一段目に足をかけたムウに後ろから声を掛けたのは年若い書庫番の娘である。
その口調は幾分疲れてはいるものの、いつもと変わらずのんびりとして朗らかだ。夜闇の静寂など意に介さないような、まるで彼女の周りだけは明るい昼間であるかのようだった。
「このような刻限になにをしているのですか」
「年の瀬ですから各方面駆けずり回ってたらこんな時間です」
 みなさん私を郵便配達か何かと勘違いしている節があるんですよね。
そう言いながら、彼女は肩から下げた鞄をぽんぽん、と叩いてみせた。
書庫番娘の肩掛け鞄と言えば、回収した書物とそのついでに配達を頼まれる書類がいつも詰め込まれているのが定番だ。
なるほど、彼女もこの時間まで仕事に追われていたらしい。時々見せる根の真面目さを垣間見たような――。
「まあ、ついでに白銀聖闘士のみんなと一杯やってたのもあるんですけどね!」
 前言撤回である。ムウは即座に彼女への労いの言葉を喉の奥へと引っ込めた。
が、重そうに鞄を反対側の肩に掛けなおす姿を見ていると、彼女の努力を認めない訳にはいかない。
 自ら志望したとはいえ、日夜一人であの雑多な物溢れる書庫を管理しているのである。彼女の場合そこから根を広げて下の図書館とも連携を図ろうとしているらしいし、聖闘士候補生や白銀たちにも参考になりそうな書を紹介していると噂に聞いている。その行動力は、ムウには少し眩しくもある。
 ふあ、と眠そうに欠伸をした書庫番を横抱きにして、ムウは微笑んだ。
慌てた彼女の辞退の言葉を聞くつもりはない。いつも騒がしさとつまらない意地でついつい手厳しく当たってしまうのだが、今夜くらいは少しだけ優しくしてやれるような気がしたのだ。
 それなのに彼女があんまりじたばたするので「大人しくしなさい」と耳元でささやく。
彼女はほんの短い間ぴたりと固まった後、唇を尖らせてムウを見上げた。
「その声はずるい」
「さてなんのことやら。そんなことよりもう少し強く掴まってくれないとうっかり振り落してしまうかもしれません」
「ムウ様は意地悪なのか優しいのかわかりませんね」
「おや、そんなに落とされたいですか」
 言うが早いか慌てて縋りついてくる華奢な腕の温度が、冬の空気の中でやさしく肌に染み込んだ。
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